映画・テレビ

2016年1月 1日 (金)

池上彰のニュースそうだったのか!!の怪

昨年末、12月29日に全部ではないが、「池上彰のニュースそうだったのか!!」を見て気になった点があったので記しておく。

副題が「2015池上総ざらい 昔と今を比べると日本はこんなになっていた 年末特大スペシャル」と長ったらしい。

この番組中、気になったのは未成年犯罪に関するデータの読み解き不足である。
この項の直前、老人のショッキングな犯罪を見せ付けてゲストを誘導すると言う稚拙な演出を行った上で、未成年犯罪のショッキングな事件を映し出すという演出を更に行い池上がグラフを交えて解説する。
実は未成年犯罪の発生割合は減っているのだと。
ここで雛壇に並べられたゲストは「へー」となるわけである。
更に池上の解説は続くが、気になったのは「再犯率」である。
確かに池上が言うように、犯罪総数に対する再犯率は増えている。
しかし示されたグラフから明らかなように、再犯件数そのものは減っているのが見て取れた。
これはどういう事か?

犯罪発生率は減っている。その中の再犯割合は増えている。
ただこれだけの事を池上を態々呼んで解説させる理由は実はない。
ここで池上が注目すべき点は、こんな上っ面の事ではない筈なのだ。

重要なのは、
犯罪発生率は減っている。その中の再犯割合は増えている。しかし再犯数そのものは人口減に応じて減っているという事なのだ。
池上が解説すべきはこの点ではないのか?

データを裏側から見てみよう。

再犯件数そのものは未成年の人口減に呼応して減っていると考えられるから、実は変動があるのは「再犯に及ばなかった犯罪」だった筈なのだ。

言い方を変える。
有意差として考えるべきは犯罪総数に対する再犯率ではなく、未成年者の人口推移とリンクさせるべきで、有意差があると考えられるのは再犯にならなかった犯罪の割合の減少なのである。

これを検証するには、犯罪の数ではなく、犯罪の内容と再犯の多寡について見るべきなのだが、番組中ではその点に全く触れられていない。
また、老人犯罪のデータを推移を見せたりしているのであるから、未成年犯罪とその他の犯罪についても比較検証すべきであった。
また、再犯が初犯を起こした同じ年に必ず起きるわけではないという含みも持たせておかないといけない。
初犯と再犯の間には時差があるのだ。
直近の犯罪の再犯率は、現時点では分からない。後に分かってくる事なのだ。

このようなデータの読み解きが不充分な状態で、番組はゲストを「へー」と言わせようとする稚拙な演出に傾注し、この当然あるべき比較検証ならびに留意点に関する説明を行っていないのだ。

池上はデータの内容を読み解くような事を言う。
しかし、その番組でデータの読解力不足を露呈したと言えるのだ。

ゲストに弁護士の北村晴男がいたが、飾りでないのだったら、突っ込みを入れて池上を困らせるくらいでないと困る。

(文中敬称略)

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2015年3月21日 (土)

ドラマ「相棒」の怪

まず。「相棒」がどんなドラマなのか解説しよう。

杉下右京は「たまたま」が続く事によく不信感を抱くが、ドラマは「たまたま」の連続である。

見落とす筈のないものを捜査一課が「たまたま」見落とし、それを「たまたま」杉下右京が発見し、それが「たまたま」事件解決に結びつき、杉下右京が関係者に会っている時に「たまたま」重要人物が現れたり「たまたま」電話が掛かってきたり、いいタイミングで「たまたま」米沢から電話が掛かってきて、杉下右京が鑑識に行けば「たまたま」いつもそこにいる。

「たまたま」ドラマ、それが「相棒」なのである。

その「相棒」のシーズン13が終了した。
その結末にガッカリした人も多かったろう。
シーズン13では杉下右京の明晰な筈の頭脳は完全に腐っていた。

「相棒」は、小野田公顕がいたから「特命係」として存続していた杉下右京というのが軸になっていた。

それを端的に現したのがシーズン6最終話で小野田公顕が亀山薫に言った言葉で、これが一つの軸になっていた筈なのだ。
「三雲判事はね、辞めるんではなく、辞めさせられるの。違法な礼状をごり押ししたから。
礼状を請求するよね。犯罪事実の欄があるのよ。
あの段階で、飯田正志にそれあった?明らかな違法捜査だよね。それも重大な。
あれ?亀山君は、何も知らなかったの?相棒なのにねえ。
杉下の正義は時に暴走するよ。
一緒に大怪我する前に、君もそろそろ、身の振り方を考えるべきじゃないかしら。
僕で良かったら、力になるよ。」

小野田公顕がいなくなり、なぜかピルイーター大河内春樹が杉下右京をかばう役になり、甲斐峯秋までもなぜか一目置いている事になっている。

実はシーズン13の15話では杉下右京は明らかな誘導尋問を行っており、小野田公顕に代わって社美彌子がその事を指摘している。
この人は自分の正義を優先するのだと。
しかしそもそも杉下右京が誘導尋問をする件は必要ないものです。
それをわざわざ描いているからには、それを下敷きにした物語展開がなければおかしいことになります。

ところが、こういったシリーズの主軸が最終話まで繋がらす完全に無視されている。
内容も稚拙である。

初代では左遷された亀山薫が海外に気持ちが動くという人物像があったし、2代目神戸尊は訳あって特命係に降格して出向してきて最終的に警察庁に戻る。
甲斐亨にはそれがない。小野田公顕亡き後、何の落ち度もない甲斐亨を杉下右京が希望しても、異動させる理由がないのだ。
息子を警察から追い出す為に甲斐峯秋が異動を受けたのだったとしたら、その後の杉下右京に一目置く言動はおかしいし、最終話では亨の犯罪の一端は杉下右京の優秀さにあるといった説明までするというおかしさの念の入れようだ。
シーズン13ではそれまでに伏線もなく、意外性に拘った制作陣の知恵のなさを露呈した。

唐突に2年前からやっていたって言われてもねえ。笛吹悦子は防犯カメラ映像で不審を抱き、甲斐峯秋は笛吹悦子を見ておかしいと思う。杉下右京は?

相棒シリーズには、東大を首席で卒業=頭脳明晰というステレオタイプと、そういう人はどういう言動をするのかと言う凡人の想像の域を出ないドラマだったのだ。

もしシーズン14があったとしたら、それは「たまたま」ですかね。

最後に一言。
角田課長は警視です。なぜ軽々しく使うんでしょうか。
米沢守には寄席のチケットを使って買収したりしてるのに、角田課長はコーヒーブレイクするのが専ら。で、なぜか「たまたま」重要な人間関係を語っていったりするわけですな。
個人的には大木/小松コンビのテレビドラマを見てみたいものです。最高の「相棒」みたいなんで。

杉下右京はもう飽きましたよ。水谷豊さん。

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2015年2月27日 (金)

健康番組の怪(R-1乳酸菌篇)

健康番組で疑問符が付くのは何も「今でしょ!」や「本当は怖い家庭の医学」だけではない。
NHK「あさイチ」、その後追いのフジテレビ「とくダネ!」で紹介された明治R-1ヨーグルトについて考えてみる。

このR-1乳酸菌については明治自身がインフルエンザや風邪に対する免疫効果について公開しているのだが、その内容に疑問符が付くのである。

まず、「山形と佐賀で行われた1073R-1乳酸菌を使用したヨーグルトのヒト試験」では、R-1ヨーグルトとの比較で用いられたのが他の乳酸菌を使用したヨーグルトではなく、牛乳であるという点である。
元々、ヨーグルトの乳酸菌は免疫力を強化すると言われているので、比較対象は他の菌種のヨーグルトで行うべきで、この試験ではR-1の優位性は分からないのだ。
この試験結果をみて注目すべき点は、牛乳を毎日100ml飲んだだけでもNK活性が上昇するという点で、なぜ殺菌された牛乳で上昇するのかという事の方が遥かに重要であるのに、R-1の効能を謳いたい明治はもちろん言及していない。
特に、「佐賀県有田町におけるNK活性の試験結果」では牛乳の方が効果的と思われる結果である。
にも拘らず、風邪罹患リスクが対牛乳比0.39になるとしているのであるから、NK活性と風邪罹患の相関に疑いを持つべきなのだが、明治は「NK細胞が活性化し、免疫力が向上すると考えられます」と言っている。
試験結果からNK活性がR-1乳酸菌と同じ様に上昇する牛乳との比較試験で、何故風邪罹患の割合に差が出るのか考察していないのだから、「考えられます」は無責任なものの言い方である。

NK活性と風邪罹患の相関に言及せずに、NK活性が風邪罹患率を減少させるという前提に立って、NK活性に的を絞ってレポートは進行してゆく。
ここで正体不明の「対照ヨーグルト」が登場する。
ヨーグルトの乳酸菌は種々雑多で、比較対象ヨーグルトは少なくとも10種類以上は必用だったと思うのだが、言及されていない。

おかしなところはまだある。
「山形と佐賀で行われた1073R-1乳酸菌を使用したヨーグルトのヒト試験」では風邪以外のインフルエンザなどの他の感染症について言及しておらず、最終段でNK活性とインフルエンザの関連をマウスの実験結果で示している点だ。
普通なら比較試験で同時に調査して導き出すべき点をマウス実験にすり替えており、しかもこのマウスの実験ではR-1乳酸菌との比較に牛乳ではなく水を与えているのである。

明治の「1073R-1乳酸菌試験結果」を私が評価すると下記のようになる。

・R-1乳酸菌が他の数多い乳酸菌に比べての優位性は分からない。
・NK活性と風邪罹患の関係は分からない。
・R-1乳酸菌によるインフルエンザの罹患率の変化が牛乳と違いがあるか分からない。

なぜ上記のような曖昧な試験結果になってしまったか想像を逞しくすると、下記の様な可能性が浮かんでくる。

調査すべき項目を絞りすぎるというポカをやったのか、あるいは他のヨーグルトや牛乳に対して優位性がないものは調べてあっても結果には書かない事にしたのではないか。

明治側の見解を聞きたいものです。

ちなみに私はここ数年100均の450g入りのヨーグルトを毎日70gくらいずつ欠かさず食べていますが、幸い風邪にもインフルエンザにも掛かっていません。
明治が他のヨーグルトとの直接比較を避けているのは、この辺が関係しているのかもしれません。

私の結論は、安いヨーグルトを、いろいろ楽しんで食べるのがよかろうという事です。
テレビ番組の情報に流されず、ちょっと立ち止まって調べてみると見えてくるものもあるのです。

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2015年2月26日 (木)

食用油についての「林修の今でしょ!講座」の怪。

2月24日、テレビ朝日系「林修の今でしょ!講座」で食用油についてやっていたので、自分なりに調べてみた事を覚えとして記しておく事にする。

α-リノレン酸について。
やたらとエゴマ油をヨイショしていたので、近所のスーパーで見てみた。
番組ではあたかもエゴマ油だけがダントツで多いような言い方だったが、実はアマニ油(亜麻仁油・フラックスオイル)にもほぼ同量含まれている。
近所のスーパーではこっちの方が若干安い。
番組では胡麻油、オリーブ油と比較していたが、これらは元々α-リノレン酸が少ないのであって、実際はてんぷら油として広く使われている菜種油の方がずっと含有量が多い。
亜麻仁油に触れず、比較の対象に含有量が少ないものを持ち出すなど、恣意的なものを感じる。
ただ、α-リノレン酸は変質しやすいので、遮光瓶を使用して紙箱に入れられて売られているエゴマ油・亜麻仁油を買った方がいいのは確かである。
番組中、女性タレントがコンビニでお弁当の醤油瓶みたいなもので売られていたと言っていたが、そういう製品は確認できなかった。
録画番組なんだから、これは編集過程でチェックしなかったスタッフの落ち度であろう。
ついでだから言っておくが、α-リノレン酸は、ラードなどの動物油にも含まれている。

油脂の混合について。
番組中、混合は差し支えないという当たり前の事を念押ししていたが、そんな事より、α-リノレン酸を適度に含み、他の不飽和脂肪酸も適度に含んでいる安価な菜種油・キャノーラ油みたいなものもあるという事の方が重要だと思うのだが、この点については番組では触れられていない。

コーン油。
コーン油がどういう効能で挙げられていたのか忘れてしまったが、近所のスーパーで一番安いマーガリンがコーン油を原料としていて、毎日パンに塗って食べているので考えない事にした。

紅花油。
番組中では血管にコレステロールが過剰に付くと動脈硬化、高血圧に陥り易くなるとの事だった。
確かにその通りなのだが、極端に減少すると血管が弱くなると以前新聞の連載記事で読んだ事がある。
その新聞記事は、食品と健康について裏側から眺めるような内容だったのだが、海外には紅花油がコレステロールの減少に作用し、脳出血などの疾患に結びつくという報告もあったが日本国内でそれを否定するものは見つけられなかったとしていた。
その記事の結びは、コレステロールについては動物油より植物油の摂取量の方が多ければ問題ないとしており、恐らくその通りで、バランスよく食事を採っておけば気にする必要はないと思う。

アーモンド油、大豆油。
これら豆類は、食物繊維を含み、ミネラル分も多いので、安い煎り豆とか、アーモンドチョコでもつまんでいればいい様に思う。
そのまま食べるのがその栄養素を獲るのに有効なものを、態々油を搾り取って食物繊維なんかを捨てるという事に合理性はないと思うのだが。

ビートたけしの本当は怖い家庭の医学なんかを観ていて思う事なのだが、こういう番組では身体にいい料理が登場したりする。
特に、「本当は怖い家庭の医学」では頻繁に登場し、登場した一日これくらい採るにはこの料理、として挙げられたものを累積していくともの凄い食事量になって、肥満になって死んでしまう。

こちらも制作はテレビ朝日である。
テレビ朝日さん、番組を見ている側に意外性を期待させ、視聴率を稼いでスポンサーから広告費を得ようという姿勢が露骨だよ。
番組を見て肥満になったらスポンサー様がオススメする脂肪を燃焼し易くする飲料を飲めという事なのだろうか。
本来、節度を持った食生活をしていれば高価な食材は必要ないし、気にする人向けの飲料を金払って買って飲む必要もないと思うのだ。

戦中戦後の食糧難をかいくぐって来た私の祖父は91歳、祖母は95歳で天寿を全うした。
彼らは旬の食材をそのまま受け入れ、凝った調理もせずに食べていた。
長寿の秘訣は、そういうところにあると思うのだ。

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2012年4月22日 (日)

あっこと僕らが生きた夏(加筆修正版)

以下は22日に一旦上げた記事ですが、その後集めたネット上の記事、及び28日未明の再放送を改めて見ましたので、大幅に加筆修正しました。
参考にした記事については出所を明記しました。
読売新聞は削除されていますが、朝日新聞と大分合同新聞のアーカイブは現時点でまだ見る事が出来ます。
彼女の写真で一番キッチリ撮られているのは、2011年7月4日朝日新聞「亡きマネジャー、心の支え」に添えられている写真です。

僕は朝日新聞を購読しているので、テレビドラマを見る際には、その評を見て決める事がある。

「あっこと僕らが生きた夏」
先週の前編放送後に評が掲載され、あ、そういえば何年か前にこんな子がいたと新聞記事で読んだ事があるなと思い当たって後編を見る事にした。
(前編の再放送が後編放送直前にある事も書いておいてくれれば前編も見れたんだが)。

見てみた。
時間軸が良く分かりにくい。何年何月という字幕を入れればいいというものではなかろう。
実在した「あっこ」の行動は、転移が見つかって余命が短いと悟った後から残された時間をいかに過ごすかという事に焦点が移っているのが窺われ、月単位では大雑把すぎるのだ。

実在した「あっこ」に関しては、新聞記事・関連ブログ記事によると、実際はこうだったようだ。

大崎耀子(あっこ)は高校2年の2007年5月にのどの不調を感じ、夏の高校野球地方大会の直前、6月に末期の上咽頭癌が見つかる。
彼女は皆に自分が癌である事を告げ、入院治療に専念する。
そのため、この夏はマネジャーとしての活動が出来なかった。
家が大分、入院先の病院が福岡と離れていた。
本人はどうか分からないが、この時点で助かる可能性はかなり低かった事は分かっていた。
治療が落ち着き、秋に一時帰宅、高校生活に戻る。
修学旅行の時期は分からないが、翌年(2008年)1月、転移が見つかり、治癒が絶望になる。
4月に3年に進級している。
夏の高校野球は地方予選一回戦敗退。
2008年7月6日の朝日新聞は彼女を写真入で紹介し、記事を彼女の言葉で締めくくっている。
「一生懸命がんばるみんなの姿が、きっとこれからも私を支えてくれる」
写真の彼女は大分痩せている。
彼女は友人と共に9月23日に「自分は見ることが出来ない」来年の春に咲くチューリップを植える事を楽しみにしていたが、それをする事ができず、9月26日に自宅で倒れ入院している。
この時のチューリップが今も高校に残る「AKKO’s GARDEN」に繋がっているようだ。
9月28日からの大分国体にも手伝いをする事を決めていたようだが、これもかなわなかった。
10月15日頃、野球部の監督、宮地弘明教諭が入院している彼女に画用紙に言葉を書かせている。
書いた言葉は「ありがとう」。
監督はこの画用紙をコピーして部員に配っている。
10月29日に永眠。
彼女が、本当に野球が好きで、残り僅かな時間でも、何かしようとしていた様子が窺える。
11月10日までに、彼女の事を伝える報道記事がどこかに載っている(出所未確認)。
11月21日の読売新聞が、彼女の葬儀の日の事に触れている。
霊柩車はグラウンドを一周し、部員は校歌を歌っていたと。
12月19日の楊志館高校の二学期終業式の様子を翌20日の大分合同新聞が記事にしている。
満点の通知表に添えられた言葉は「すばらしい命の授業、ありがとう」。
この記事では関係者として宮地弘明教諭のほか、母親と羽田恭輔部長にも取材をしている。
記事は、彼女の闘病の様子にも触れており、2007年7月29日に福岡市内の病院で撮ったとされる、県大会の優勝旗を手にした彼女の写真も掲載されている。
翌2009年3月3日の楊志館高校の卒業式の様子を翌4日の大分合同新聞が伝えている。あっこと一緒に卒業したいという声に応え、あっこの卒業証書が用意され、野球部監督の宮地弘明教諭が名前を読み上げて、母親に渡している。
7月9日、高校野球のエピソードを綴る朝日新聞は前年主将で卒業して社会人になった佐藤翔司を取材した記事を載せ、あっこがどういう女の子だったのか、かなり詳しく書いている。書き出しは、「ありがとう 白い紙に書いてあるのはその5文字だけだ。」
2011年7月4日の高校野球のエピソードを綴る朝日新聞は「亡きマネジャー、心の支え」というタイトルで「AKKO’s GARDEN」の今を写真入りで伝えている。新聞社が球場の放送室で撮ったと思われるキッチリした彼女の写真も添えられている。

ドラマの描写
病院と自宅との距離感が少なくとも後編を見る限り感じ取れない。
休みが多かった彼女は3年に進級している。
かなりの補習があって、彼女はもちろん、教諭の協力もかなりあったはずだ。
それが一枚の「補習の予定表」と、「あっこは頭がいいからやればできる」という友人の言葉で片付けてしまっている。
でも野球に情熱を傾けた彼女だから、やっぱりそこに焦点を絞った方がいいのかな。
演じた川島海荷はとても良く演技していたと思うのだが、病気で衰えが隠せない人を演じるのは無理がある。

今も新聞記事のアーカイブやブログで当時の彼女の写真を見る事が出来るのだが、彼女は敗戦した選手達と一緒に顔をくしゃくしゃにして泣いている。
立っている手足は痛々しいくらい細く、その細い左手はキャプテンのユニホームの裾をぎゅっと握っている。普通の女の子だ。

ドラマは時に必要以上にヒロインを気丈に演出する。
でも、実際のあっこは選手達と一緒に泣く普通の女の子のはずなのだ。
「かっこよかったよ」のセリフが迫真の演技を作り話に変えてしまったようで残念だ。
彼女は川島海荷の演じる様な気丈なカワイコちゃんじゃあない。
甲子園に連れてゆくと約束したのに負けてしまって謝る選手に「あやまらないで」と言おうとしたのに涙が止まらなくて言えなかった・・・。

実は、彼女、この試合の翌日に朝日新聞に写真入りで紹介されている。
病気が癌である事には触れられていない。
この記事ではちゃんと取材を受けている様だし、本人もこの記事を読んだはずだ。
「お涙頂戴」のドラマには必要ない件(くだり)なのかもしれないが、楊志館は前年の代表校だったし、何かに付けて取材を受けていた事は間違いなく、その過程で彼女の存在を知った記者も一人や二人では無かったはずで、高校野球を感動のドラマにしがちな新聞記者がその事を記事にしても何の不思議も無い。
言い換えれば、楊志館が前年大分の代表校になっていなければ、彼女の存在は一部のものにしか知られていなかった可能性が高いのだ。
それにしても、ドラマでも新聞に載った自分を見た高校生らしいリアクションを見たかった。
「あっこ、新聞に写真入りで載ってるやん!!」

ドラマでも触れられていたが、彼女はそのあとの試合の手伝いをしていて、その時のものと思われる、スタッフの札を下げ、放送卓を前に座っている写真も新聞記事のアーカイブで見る事が出来る。
特に可愛いとか、美人とかいうタイプではないと思うけれど、マスクをおろし、歯を見せて笑っている彼女の写真を見ると、きっとみんなに愛されていたんだろうなあと思うのだ。
手は細く、制服もブカブカで、彼女が病気で痩せた事が写真からも窺われる。
しかしドラマで演じられている彼女は血色が良く、ご丁寧にも夏の大会試合翌日、寝坊して慌ててソーセージを咥えている描写もある。
少なくとも後半を見る限りでは入院はするが闘病の様子はあまり描かれていない。
福岡の病院の医師に、帰宅療養は近所の医師の疼痛コントロールになると言わせているだけだ。
真の彼女を演じる事は難しいと思うが、脚本、演出がそこから逃げてしまってはいけない。

最期の病床で彼女が話せなくなったのは気管切開のせいなのだが、ドラマではそれには触れずに突然母の手に文字を書くシーンに飛ぶ。
昨日まで元気だったのに?と思った友人も多かったと思うけれど、そういう描写は一切無い。
監督が病床の彼女に画用紙に言葉を書いてもらう(というか、書かせる)シーンがある。
彼女はこの2週間後にこの世を去る。
監督はその言葉「ありがとう」をコピーして野球部員に配ったらしいのだが、この事はドラマでは触れられていない。
このコピーがいつ配られたのかは分からないが、直後と推察される。
仲間は皆、この時に悟ったに違いない。葬儀の日に監督はこれを持っていたという。

全体として、淡々として流れる展開だったけれど、その中で兄の感情を表に出すシーンは少々邪魔だった。
彼女が自分の体が変わってゆき、それが確実に死に向かっているという現実と対峙した描写は一切無いのだから、兄にも静かに見守らせて欲しかった。
「お兄ちゃん、話が重いよ。」

 彼女のノートはドラマでも頻繁に出てきますが、
 彼女は自分の死を「思い出になる」と表現し、「思い出になりたくない」と書いています。
 また、死後、生まれ変わったとしても、今の「自分」はやっぱり消えてしまうのかな、とも書いています。
 彼女の実際のノートに勝るものはないとはいえ、川島海荷はこういう彼女の生死感に関わる演技を殆どしていないのです。

きつい物言いをしてしまったようにも思いますが、このドラマ、限られた条件の中で冬に夏を主体とした状況を描くなど、かなり役者も大変だったと思いますが、よく出来ていると思います。
 素直に泣いていいと思います。
 もう一回再放送してくれないかな。
 前編が見たい。

・・・彼女は、残した言葉通り、今もグラウンドを見下ろしているのでしょうか。
 しかし淋しい事に、一緒に青春を共にした仲間は巣立って久しく、そのグラウンドにはもういないのだ・・・。

最後に断っておきますが、この記事はドラマの原作(私は読んでいない)ではなく、彼女に纏わるエピソードの報道記事・ブログ記事を元にドラマと対比させたものです。

(文中敬称略)

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