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2015年12月 6日 (日)

笹子トンネル事故の怪

「あなた達、ここにいる人達が、一人ひとり、本当のプロの意識がなかったがゆえに、ここにいる9人は死にました。誰か一人が、『この点検方法はおかしい』、『天井板が危ない』ってさえ言ってくれたら、お姉ちゃん達は死なずに済みました。」

石川友梨さん(当時28)の妹・愛さんの3年の追悼式での言葉が全てを語っている。

私は事故前に何度もこのトンネルを通っていたので、この事故に関して注目していたのだが、分かった事は機械技術者の私から見れば信じられない事ばかりであった。

まずアンカーボルト。
これは機械設置の際にも、土台に装置を固定するのに用いられる事が多いのであるが、私の認識はあくまで載っている物が動かないように使うものである。
街角でも自動販売機なんかの足元を見ると、販売機が勝手に歩いてゆかないようにしているアレである。
基本的に、荷重を支えるのは脚であって、アンカーボルトはあくまで位置決めなのだ。
笹子トンネルの天井板は、1トンを超える物もあるにも係らず、下から重量を支える脚が無く、アンカーボルトで吊るされている。
非常に危険な構造である。

強力な接着剤。
アンカーボルトにいかに強力な接着剤を使用しても、荷重を支えるのはトンネルの構造物である。
ここで検証が必要なのは、トンネル本体の天井に天井板を支えられるとした設計の前提である。
トンネル構体は、自身を支える為に強固なアーチ構造をしているのであるが、その内側の化粧ともいえる外壁部分になぜ重量物をぶら提げようと考えたのであろうか。
繰り返しになるが、重量物を支える場合は、下から支える事をまず考えるべきであって、化粧の上っ面に何ミリアンカーを深く入れようが、強固な接着剤を併用しようが、それで危険な構造が安全になることは決してない。
基準がどうあろうとも、設計時、施行時、点検時に、これは危ないのではないか?と思った人はいたに違いない。
そう考えれば、冒頭の愛さんの言葉は至極当然のものなのである。
プロの意識、それ以前に、どう見ても素人でしかない。
調査報告書でも原因をハッキリさせていないのは、報告書に関わっていたのが土建関係者だったからだと思っている。
なぜなら、原因を明らかにすれば、自分達の基準が危険だという事が露呈してしまうからだ。
このような問題意識の無さでは、同様なずさんな基準及び設計施工に起因する「殺人」はこれからも起きるだろう。

マスコミに望む事は、この明らかな落ち度を、愛さんの言葉を使って「遺族の思い」として片付けないで欲しいと言う事だ。
設計・施行の前提がおかしい。これを報じるのに「専門家」のコメントに安易に頼らず、各マスコミで記者・解説委員が激論を戦わし、とことん追求して欲しいのだ。
重量物は下から支えるべきもの。吊るしたから落ちた。この当たり前の事が起きたのだ。
連鎖して複数の天井板が落ちたのは、吊るすという事が不安定で危険である事の証左なのだ。
愛さんをはじめとして、遺族の方々は皆、殺されたと思っている筈。
この考え方は正しい。そう、殺されたのだ。
「ここにいる人達」が誰であったか、一人ひとりマスコミはきちんと報じるべきなのにそれを怠っている。非常に残念な状況だ。

点検に問題があった?
複数のアンカーボルトが一斉に抜け、破断して一気に落ちたのだ。
アンカーボルトで恒久的にものを吊ってはいけない。抜ける事もあるからだ。
そして、1本抜けるとバランスを崩して一気に瓦解する事もある。
この事故はその容易に想定される事態が起きたに過ぎない。
いや、事故ではない。このような危険な施工を平然と行った設計管理側の殺人なのである。

山梨県警察に望む事は、明らかな人命軽視の施工管理側の責任者を炙り出し、殺人容疑で送検する事である。
こんなの過失じゃない。危ない施工方法にGOを出した人による無差別殺人なのだ。

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コメント

石川愛さんの訴えは間違っている。公共の電波で語る前に、技術鑑定人に相談して欲しい。私も鑑定人として法廷に立った経験が有り、「技術立国への構造改革」でオンリーワン・ヒットする私書の筆者の社会責任として、弁護士を通じて無償でも相談に乗ります。
国民の安全は憲法で保障されて居るが、それは国の財政、技術の範囲内で、それ以上は不可抗力で、その限界は「彼我検定」に依る。本事故は、貴方は「点検が悪い」様に云いますが、点検しても判らない設計に成って居た。つまり何の前兆も無く、突然人が死ぬのを「シングル・フェラー・ポイント(SFP)」と云ってNASAの信頼性工学では禁手なのです。ですから、国交省の旧運輸省側では、飛行機は墜落に対しては3重安全に、自動車には墜落は無いので2重安全に法規制されて居るのです。然し旧建設省側法規では野放し。先ずは其の省内不整合を、私書に指摘する「公務員、業務上、未必の故意に依る殺人罪」で、国交大臣を告訴すべきでしょう。
更に、事故後のテレビに依れば、並行して弛めた第二ケーブルを設け、主アンカーが抜けても、第二ケーブルがビーンと張って、天井が少し垂れ下がって、通行者にも、異常が容易に判る程度で、崩落は防ぐ構造に成って居ました。更にテレビでは、「ボルトの穴を斜めにし、接着剤が剥がれても抜けない構造も普及して居る」と云って居ました。更に明治以来、有限要素法と云って3角形の集合を使う鉄橋の様な構造が正規で、設計者が図面を省略して現場作業でワイヤーを張らせたのも悪いのです。PL法の時代ですから、設計責任者も、法規が未発行でも彼我検定の責任を問われる筈でしょう。

投稿: 岡田元浩 | 2015年12月 7日 (月) 10時59分

岡田様、なぜ石川愛さんではなく、石川友梨さんの妹・愛さんなのか、まずそこらへんの常識を踏まえましょう。
弊ブログの次記事にちゃんと書いてあるんですがね。

愛さんは公共の電波で語ったのではありません。
マスコミが電波に乗せたのです。
それを混同すべきではありません。

私は「点検が悪い」とは一言も言っていません。
重量物は下から支えるべきものと言っているのであって、それを吊ったから落ちる事もある。で、実際に落ちて9人も殺した。
「点検」に問題があるかのように言うのはすり替えだと言っているのです。
設計に安全性の配慮を欠いたというのが趣旨ですから、SFPは関係ありません。
人が言いもしない事で勝手に話を展開するのは論外です。

「事故後のテレビに依れば、並行して弛めた第二ケーブルを設け、主アンカーが抜けても、第二ケーブルがビーンと張って、天井が少し垂れ下がって、通行者にも、異常が容易に判る程度で、崩落は防ぐ構造に成って居ました。」
で、どうでしたか?効果はありましたか?結果は連鎖的落下ですよ。9人も殺してね。

「「ボルトの穴を斜めにし、接着剤が剥がれても抜けない構造も普及して居る」と云って居ました。」
これもテレビの受け売りですか?
ものを吊るす場合、力の掛かる方向に配慮すべきもので、それを斜めにして「抜け難くする」のは奇妙な本末転倒ともいえる方策です。
いいですか。あくまで「抜け難くする」程度のもので、抜けなくなる訳ではありません。
このような方策が考えられる事自体、抜ける事もありうるという事の証左なのですよ。

安全に対する配慮を欠いた設計がまずあった。
これは公の安全規格、規制とは別に考えるべきものです。

この危険な設計、施工、点検に関わった人は、どれだけいたのでしょう。
愛さんの言葉を借りなくても、おかしい、危険だと思った人がいた筈なのです。
プロであるならば良心の呵責に堪えかねて声を上げ、安全性を追求すべき会社であるならば、その声に耳を傾け、安全規制に関わらずその対策をした筈。
私はそう思います。
この考えが間違っていますか。
私は間違っているとは思いません。

鑑定人を自称するならば、技術的素養を持って、任に当たるべし。
見当外れな事例を引いて持論を展開し、それが通ると思うのであれば、その考えは安全性の追求を阻害するものと考えるべし。

投稿: bikke(管理人) | 2015年12月 8日 (火) 02時15分

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